魔女の家の暖炉では、薪がパチパチと心地よい音を立てながら燃えていました。
橙色の光がゆらゆらと揺れ、部屋の隅々を柔らかく照らしています。
窓の外には、澄み渡る夜空に月が輝き、静かな光を落としていました。
「……マチルダ様。」
低い声が、静寂を破ります。
アーサーが、黒曜石のような深い瞳で彼女を見つめていました。
「なんだい?」
魔女は、暖炉の炎を見つめたまま答えます。
「一体、いつからお考えになっていたのですか?」
アーサーの問いに、魔女はゆっくりと目を閉じました。
そして――
まるで魔法が解けるかのように、彼女の姿が静かに変わっていきます。
金色の髪が流れるように輝き、透き通るような白い肌が、夜の闇の中で淡く光を放ちました。それは、神々しい美しさをたたえた女性――本来のマチルダの姿でした。
彼女はそっと目を開き、いたずらっぽく微笑みます。
「さぁ、なんのことかしらね?」
アーサーはそんな彼女を見て、小さく息を吐きました。
「まったく……。」
やれやれと首を振りながらも、その声にはどこか誇らしげな響きがありました。彼は静かに言葉を続けます。
「いつまでもあなた様のおそばに。」
おわり