その時、アルバートはおばあちゃんから聞いた魔女の森の話を思い出しました。


この美しい街の外れには、決して足を踏み入れてはならない深く暗い森が広がっているという話を。


魔女の森には、蛍光緑のキノコが夜空に向かって丸い傘を広げ、地面からぼんやりと光を放っています。


その幻想的な輝きは、まるで小さな妖精たちが森の奥でかくれんぼをしているかのようです。


夜になると、オオカミの遠吠えが森中に響き渡り、湿った土と腐葉土の匂いが鼻をくすぐります。


その中に時折甘い花の香りが混じり、足元はぬかるんでいて、一歩踏み出すたびに靴が沈みます。


古木の枝が擦れ合う音は、まるで誰かが囁くようです。森全体が生きているかのように息づいています。


魔女はかつてこの街に住んでいた美しい女性でした。ある出来事をきっかけに魔女となり、森の奥深くにひっそりと暮らしながら、人々を誘い込み、二度と戻れなくすると伝えられています。


けれど、その伝説には続きがあります。


魔女だけが持つと言われる不思議な花を持ち帰れば、どんな願いも叶うというのです。