子どもたちは険しい山道を登りながら、虹の谷を目指していました。
しばらく歩いていると、突然――。
ゴゴゴゴゴ……!
不気味な音が足元から響き、地面が大きく揺れました。
「な、なんだ!?」
次の瞬間、巨大な岩が地面から隆起し、子どもたちの行く手を阻むようにそびえ立ったのです。
「こんなの今までなかったぞ……!」
突然の出来事に、子どもたちは驚き、混乱しました。
「引き返すのだ。ここは我々の神聖な大地。人間が来るべき場所ではない。」
低く響く声に、子どもたちは凍りつきました。
なんと、目の前の大岩に目と鼻と口、そして手が現れたのです!
赤く光る目、白い煙を吐き出す歪んだ鼻、鋭い牙が並ぶ裂けた口。さらに、ゴツゴツとした長い爪の生えた手が岩の側面から伸びてきます。
岩の精霊は恐ろしい形相で子どもたちを睨みつけていました。
アルバートはその迫力に圧倒され、一歩後ずさります。ドルジはあまりの怖さに泣き出してしまいました。ヨハンは冷静に岩の精霊を観察し、その正体を見極めようとしています。
「お前たちはどこからやってきたのだ……?答えようによっては、食べてしまうぞ!」
岩の精霊の言葉に、子どもたちは恐怖で体が硬直しました。息をすることさえ忘れ、ただ立ち尽くすしかありません。
しかし、アルバートは勇気を振り絞り、答えました。
「僕たちは魔女に頼まれてこの山に来たんだ!七色の花を持ち帰るために!」
「七色の花だとぉ!? ワーハッハッハ!お前たちのような小さく弱っちい存在が七色の花だとぉ!? ワーハッハッハ!」
岩の精霊は、子どもたちを嘲笑うようにゲラゲラと笑いました。
「うるさい! 僕たちは友達を助けるために、その花が必要なんだ!絶対に諦めないぞ!」
……。
岩の精霊は何かを考えているようです。
「ならば、一つ賭けをしよう。お前たちが私の出すクイズに答えられたなら、ここを通してやろう。ただし、答えられなかったら、お前たちを食ってしまうぞ!」
アルバートは迷わず答えました。
「わかった!受けて立つ!さあ、問題を出せ!」
「では問題です。朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これなーんだ?」
子どもたちは顔を見合わせ、頭を悩ませました。
アルバートは記憶をたどりながら、「うーん、どこかで聞いたことがあるような……」と呟きました。ドルジは不安そうにヨハンの方を見つめます。
すると――。
ひときわ賢いヨハンが、自信に満ちた声で言いました。
「わかったぞ! 答えは人間だ!」
「ぐぬぬ……。なぜわかった!? ……まあいい。正解だ。通るがよい。ズゴゴゴゴゴ……。」
大岩は徐々に元の山へと戻り、辺りは再び静寂に包まれました。
「やったー!なんとか助かった!さすが博士!ありがとう!」
しかしヨハンは少し考えながら、こう言いました。
「うーん……。これは有名なクイズで、誰でも知ってるような内容なんだよね……。少し気になる。気をつけて先に進もう。」
「よくわかんないけど、行こうぜ!博士、さすがだな!」
アルバートはあまり深く考えない性格のようです。隣を見ると、食いしん坊のドルジはなにやらパンをかじっています。
こうして、子どもたちは虹の麓へと急ぎました。