「急ごう!」


子どもたちは元気よく走り出しました。


しかし、突然――


空が暗くなり、巨大な影が頭上を覆いました。


「なんだ!?」


驚いて見上げると、そこには――


翼を大きく広げた、恐ろしく巨大な鷲が宙を舞っていました。


「ここは通さん! 我が大地に何用だ? 貴様ら!」


大鷲は、鋭い爪とくちばしを光らせながら、子どもたちを威嚇しました。


「なんて大きさなんだ……!」


普通の鷲は大きくてもせいぜい3メートルほどですが、この大鷲はどう見ても10メートル以上はありそうです。


鋼鉄のように硬い羽根、太陽の光に反射して輝く鋭いくちばし。その巨大な翼が羽ばたくたびに、強烈な風が巻き起こり、子どもたちは思わず後ずさりました。


「わけあって、お前たちをこの先へ行かせるわけにはいかぬ! さっさと立ち去れ!」


アルバートは負けじと言い返します。


「僕たちはどうしてもこの先へ行かなくちゃいけないんです! 七色の花を持ち帰らなきゃならないんです! どうか通してください、大鷲さん!」


「ふむ、そういうことならば仕方がない。ならば、わしと勝負をしてもらおう!」


「勝負……?」


「そうだ! そこの岩の上で、わしと大食い対決だ!」


「ええっ!?」


ドルジは思わずギクリとしました。しかし、その口はすでにモグモグと動いており、何かを食べている最中のようです。


「い、いいけど……食材は何だい?」


「これだ!!」


ドサッ!!!


大鷲はおもむろに、山のようなあんぱんを目の前に積み上げました。


「もちろん、ミルクもある。さあ、やるのか、やらないのか。」


「おい、ドルジ! お前の底力を見せてやれ!」


アルバートがドルジの背中を叩くと、ヨハンも腕を組んでうなずきました。


「うん、あんぱんと牛乳の組み合わせは最高だからね! いいよ、大鷲さん! それじゃあ、勝負だ!」


ドルジは嬉しそうに、目を輝かせて言いました。


「1・2・3……ゴー!! レッツゴー!!!」


ドルジは、勢いよくあんぱんを次々と口に詰め込みます。牛乳をゴクゴクと飲み干し、さらにあんぱんを頬張る。まるで吸い込むようにたいらげていきました。


「うぐぐぐ……!」


大鷲は、ドルジの驚異的なスピードに目を丸くしました。


「な、なんという……!?」


「もぐもぐもぐ……ぷはっ! ごちそうさま!」


ドルジが満足そうに口をぬぐった瞬間――。


「ま、参った……! ここまでとは……!」


大鷲は悔しそうに羽をバサバサと広げ、空へと舞い上がりました。


「よし! 先を急ごう!」


子どもたちは、虹の麓を目指して走り出します。