『ごちそうさまでした!』
満腹になった子どもたちは、魔女にお礼を言い、帰ろうと立ち上がりました。すると、背後から魔女の声が響きます。
「ところで、坊やたち。なぜこんなところに来たんだい?」
子どもたちは驚いて振り返りました。そうです、本来の目的は、魔女が持つと言われる不思議な花を手に入れることだったのです。
アルバートは勇気を振り絞り、魔女に頼みました。
「魔女さん、お願いがあります。あなたが持っているという不思議な花を、僕たちにください!」
魔女はアルバートの言葉を鼻で笑い飛ばします。
「ヒッヒッヒ…そんなものはないよ。願いが叶う花? バカなことを言うんじゃない。そんなものがあるなら、とっくに私が使っているさ。ヒッヒッヒ…。」
しかし、子どもたちの真剣な眼差しを見ると、魔女の態度が少し和らぎました。
「いったい、どんな願いを叶えたくてここへ来たんだい?」
アルバートはこれまでの経緯を魔女に話しました。
「なるほど。大切な友だちのために、大人も寄りつかないこんな場所まで来たのかい。いいだろう、一つだけ教えてあげよう。」
魔女はゆっくりと続けます。
「この街の東の山に『虹の谷』と呼ばれる場所がある。そこでは、1年に1度だけ、大きな虹がかかることがあるんだ。その虹の麓に、『七色の花』と呼ばれる虹色に輝く花が咲く。たった1年に1度だけね。七枚の花びらがそれぞれ異なる色を持ち、見る者を魅了するほど美しい。もし、それを見つけることができたなら…どんな願いでも叶うと言われているよ。」
魔女はにやりと笑い、指を一本立てました。
「いいかい? 大きな虹がかかる時を狙うんだよ。ちょうどいいタイミングだね。三日後の夜、満月が昇った翌朝だよ。ヒッヒッヒ…。」
アルバートは力強く頷きました。
「うん! 待ってて! 必ず持ってくるよ!」
そう言うと、アルバートは勢いよく走り出しました。
「待ってよ!」
食いしん坊のドルジは、まだ食べかけのパンを口にくわえながら、慌てて魔女の家を後にします。
子どもたちの足音が遠ざかると、アーサーが魔女に話しかけました。
「本当に、よろしいのですか? マチルダ様。」
「ヒッヒッヒ…ちょうどいい暇つぶしじゃないか。さてと…。」
魔女はそう言うと、何やら呪文をつぶやきながら、ゆっくりと空に手をかざしました。
すると、綺羅びやかな音とともに、キラキラと輝く光が山の方へ飛んでいきます。
それを見ていたアーサーは、ため息混じりに言いました。
「まったく…あなたという人は…。」
アーサーはやれやれと呆れた顔をしています。