しばらく歩くと、山のように巨大な木が、空を覆い尽くすようにそびえ立っていました。根元は数十人がかりでも抱えきれないほど太く、樹皮は深い緑色の苔で覆われています。
子どもたちがその木に近づいた瞬間――。
ぼんやりと淡い光が灯り、やがて輝きが増していきました。まるで長い眠りから覚めたかのように、その巨木はゆっくりと目を開けます。
燃えるような赤い光を放つ巨大な目が、じっと子どもたちを捉えました。口がゴボゴボと音を立て、鼻がヒクヒクと動き、最後に――。
太い枝がまるで手のように伸びてきたのです。
「お前たちは誰の許可を得て、この地にやってきた? ここは我々精霊の土地だ。早々に立ち去れ。」
闇の奥底から響くような、低く不気味な声が、子どもたちの耳に届きました。
「ごめんなさい!でも、僕らは七色の花をどうしても持ち帰らないとダメなんです! どうか、ここを通してください!」
アルバートは、礼儀正しい男の子でした。
「フハハハハハ! 七色の花だと!? フハハハハ!」
「何がおかしいんだ!」
アルバートは、精霊の態度に怒りを覚えたようです。
「おい、アルバート。まずは話を聞こう。」
ヨハンは、いつものように冷静でした。
「なるほど、では私の出す試練に合格できたのであれば、ここを通してもよい。」
「やってやろう! どんな試練なんだ!?」
「そこに小さな小川があるだろう? その川に、こうやって……。」
大木は、自身に絡みつくツルを器用に使い、小石を拾い上げると、川に向かって勢いよく投げつけました。
小石は水面を跳ね、トントントンと音を立てながら遠くへ飛んでいきます。
大木は、自信満々に言いました。
「フハハハ! すごいだろう! お前たちにこれができるかな?」
アルバートは、真剣な表情で小石を拾い上げ、川辺へと歩み寄りました。そして、全身の力を込めて小石を投げつけます。
――ヒュッ!
小石は白い閃光のように水面を駆け抜け、
トントントントン……!
精霊の投げた小石をはるかに超える距離まで跳ねていきました。
「これくらいなら、いつもやってるよ!」
アルバートは得意げに言いました。
「グヌヌヌヌ……! ならば通るがよい……。」
大木は悔しそうに唸ると、次第に光を失い、ただの静かな木へと戻っていきました。
「さぁ、行こう!」
アルバートが元気にそう言うと、ヨハンは眉をひそめながら言いました。
「うーん……なんだか引っかかる気もするけど……まぁ、いいか。」
そして、隣を見ると――。
ドルジはまだ何かをムシャムシャと食べていました。